漢方治療

漢方治療とは

漢方薬は、6世紀に中国から日本に入り、その後日本で独自の発展を遂げた伝統医学です。明治以降は西洋医学を学んだ者のみを医師に認定した影響で、一時は影を潜めましたが、最近は、漢方の良さが広く再認識されており、大学の医学部の講義でも必修科目になっています。漢方は、誰もが元々備えていると言われる「自然治癒力」を高め、体の状態を整える効果が期待できます。これは、体の持つ本来の機能を正常に戻して、臓器を活発化し、免疫力を高め、病気になりにくい体質に改善していくというものです。とくに女性に多い悩み(更年期障害、生理不順、便秘症など)については、様々な漢方薬を使い分けながら症状を改善することが期待されています。

婦人科で用いられる主な漢方薬

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

“三大漢方婦人薬”のひとつで、冷え性、貧血、めまい、むくみといった症状に効果があるとされ、月経痛や月経不順、更年期障害などの方によく用いられます。この薬に含まれる当帰と川芎という成分が血のめぐりをよくするほか、血の不足を補い、体を温めるといった効果があります。しびれや神経痛などを改善する効果もみられます。

加味逍遥散(かみしょうようさん)

疲労しやすい、体力に自信がない、イライラ、不眠状態であるという方に使用されることが多く、月経異常、月経不順の方に多く用いられます。気逆からくるとされる神経の高ぶり、気うつからくるとされる抑うつにも効果があると言われています。こちらも“三大漢方婦人薬”のひとつです。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

足腰が冷えて疲れやすく、頻尿、のぼせの方などに効果があるとされ、“三大漢方婦人薬”のひとつです。体力が割合あるとされる方に処方されます。月経異常、子宮内膜症、更年期障害などでお悩みの方に用いられます。漢方美肌剤としてもよく知られており、にきびやしみ、湿疹や皮膚炎といった皮膚のトラブルでも使用されることがあります。

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

漢方で言うところの瘀血(おけつ:血流が悪くなって汚れた血液)を改善させる効果があるとされ、頭痛、イライラ、不安、不眠、便秘症などの症状がある、月経不順や更年期障害の方などに処方される漢方薬です。この薬に含まれる「桃仁」は、血行をよくする効果があり、瘀血を改善すると言われています。また「大黄」と「芒硝」は下剤の成分が含まれており、便秘の症状に有効です。

温清飲(うんせいいん)

月経不順や月経困難症、更年期障害の方によく用いられる漢方薬で、皮膚の色つやが思わしくなく、かさかさしており、痒みを伴うといった場合に効果があるとされています。神経症や皮膚炎にも有効で、のぼせ気味で出血しやすいといった方にも処方する薬です。

温経湯(うんけいとう)

漢方でいうところの血の量が不足した「血虚」を改善する薬で、下腹部がよく冷える冷え性な方、貧血の方に効果があるとされ、月経困難症や更年期障害など婦人科系疾患が原因で不調な患者様によく用いられます。

芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

急激に起こる筋肉のけいれん、特にこむら返りに速効性を発揮する漢方薬です。筋肉を弛緩(緩める)させる作用があるため、月経困難症にも効果があります。